私達の眠りには、ノンレム睡眠という深い眠りと、レム睡眠という浅い眠りがあります。通常、眠りに落ちると、始めにノンレム睡眠が発生します。眠りについてから1時間ほどたつと、徐々に眠りが浅くなりレム睡眠へと移行します。 その後、またノンレム睡眠に移行して深い眠りに入った後、眠りが浅くなってレム睡眠に移行します。 私達は、ノンレム睡眠とレム睡眠を1セットにした睡眠サイクルを一晩に4〜6回繰り返します。
ノンレム睡眠では、血圧と体温が下がり、体はだんだんとリラックスしていきます。一方、レム睡眠下では、血圧、心拍数、呼吸速度が上がり、眼球が左右に急速に動く眼球運動(Rapid Eye Movement)が始まります。レム睡眠中は、あごから下の筋肉が著しく弛緩して力が入らないため、寝返りを打つこともできません。
睡眠サイクルの1周目ではレム睡眠(浅い眠り)の時間は短く、ノンレム睡眠(深い眠り)の時間が長い傾向にありますが、睡眠サイクルが繰り返されるのにつれ、この傾向は逆になっていきます。つまり、後半のサイクルでは、浅いレム睡眠の時間が⻑く、深いノンレム睡眠の時間が短くなります。明け方に夢を見やすいのはこれが理由です。
睡眠の5つの段階
アメリカの国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)では、睡眠段階を4段階のノンレム睡眠およびレム睡眠の計5段階に分類しています。
約5〜10分の間に眠りに落ちたり、目覚めたりします。この段階では、簡単に目を覚ますことが出来ます。目の動きはとても遅くなり、筋肉の活動も緩やかになります。
目の動きが止まり、睡眠紡錘波と呼ばれる突発的な素早い脳波はあるものの、脳波全体は遅くなってきます。心拍数が遅くなり、体温は下がってきます。
デルタ波と呼ばれる波長の長いゆっくりとした脳波が出始めます。デルタ波が20%を超えるとステージ3、50%を超えるとステージ4と定義されており、さらにステージ4が進むと、脳はほとんどデルタ波しか出さない状態になります。
ステージ3と4はノンレム睡眠(深い眠り)と呼ばれ、この状態の人を起こすことは非常に困難です。ステージ4のときに、目を覚ましてしまった人はすぐには起き上がれませんし、意識が朦朧とし数分間は頭が混乱してしまいます。
レム睡眠の間、顎から下の骨格筋は弛緩状態ですが、脳は覚醒に近い状態で活動しています。まぶたの下で目がキョロキョロと動くのが特徴で、この素早い目の動きがレム睡眠の語源になっています。呼吸は不規則で浅くなり、心拍数は上昇し、血圧は高くなります。また男性は陰茎が勃起します。
鮮明な夢をみるのはこのステージです。
神経伝達物質による睡眠サイクルの操作
脳内には神経細胞(ニューロン)という情報を処理したり、伝達したりする細胞があります。神経細胞と神経細胞の間にはシナプスという情報の受け渡し部分があり、そのシナプスでの情報の受け渡しを行うのが神経伝達物質という化学物質です。脳はこれら神経伝達物質をコントロールすることで、眠りと目覚めのサイクルを操作しています。
神経伝達物質にはアセチルコリンやアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどがあります。化学物質といっても、通常、私たちの体で作られるものなので、食べ物やサプリメントの影響を強く受けます。