夢の中で「今、自分は夢の中にいる」と気づくことができれば、その夢は明晰夢に変わります。今回は夢の中で夢だと気づく技術についてご説明します。

夢を明晰夢に変えるためのテクニックで最も有名な方法は「夢の中で自分の手を見る」という方法です。これはカルロス・カスタネダというアメリカの作家・人類学者がドン・ファン・マトゥスというインディアン呪術師に教えてもらったという手法です。簡単でシンプルな方法に聞こえますが、夢の中で手を見ようと決めていても、なかなか夢の中で手を見ることはできません。夢の中では、自分の行動をコントロールすることができないため、この手法を知っていても実践に移すことは難しいのです。

トーライ博士の自問自答メソッド

ドイツの心理学者、ポール・トーライ博士が200以上の実験テーマを10年以上かけて調査した末に、明晰夢を見るための最も効果的な方法を導き出しました。日中起きているときに「今自分は夢を見ているのか?これは夢かな?」と何度も自分自身に問いかけるというものです。

日中目覚めている間「自分が今夢を見ているのかどうか」を何度も自問します。これを自分の習慣にして、一日のうちに何度も、何度も自問する癖をつけます。普段の生活でこの行為が癖づくと、夢の世界の中でも同じことをするようになります。夢の中で「これは夢なのか?」と考えることができると、自分が夢の中にいることに気づき、夢の中で自分の意識を取り戻す事ができます。この行動を癖にするために、日中、可能な限りたくさん行います。

布団に入り、寝る直前にも行うと効果的とのこと。寝る直前に行うことで、夢を見ているときに自問しやすくなるそうです。

トーライ博士の研究では、一日に最低でも5回から10回は自問自答を繰り返すことで、ほとんどの人は1ヶ月以内に、はじめての明晰夢を経験すると結論づけています。

ラバージ博士のリアリティテスト

トーライ博士の自問自答メソッドを、明晰夢研究の世界的権威であるスタンフォード大学のスティーブン・ラバージ博士が改良した方法があります。リアリティテストという手法で、とんでもなく強力な明晰夢テクニックです。私がこれをやり始めたときは、スタートして2週間もかからず明晰夢を見ることができました。

リアリティテストの仕組みは、トーライ博士の自問自答メソッドと同じですが、機械的にできるように改良されています。明晰夢を描いた映画インセンプションで、レオナルド・ディカプリオ演じるコブが、自分が夢にいるのか、現実にいるのかを確かめるため、事あるごとにコマを回します。劇中では、コマが回り続ければ夢で、コマが自然に止まれば現実というルールがありましたが、まさにこれがリアリティテストです。

以下、リアリティテストのやり方です。

  1. デジタル時計の数字を読む

    デジタル腕時計を身に着けます。小さいやつでいいので、日中は常につけておくようにしましょう。

    時計表示の文字を黙読します。時間としてではなく4桁のデジタル表示として読みます。例えば12:00の場合は「いちにぜろぜろ」です。

  2. 時計から視線をそらし、再度時計の数字を読む

    時計の数字を黙読したら、一度視線を別の場所に移して、時計以外の別のものを見ます。その後、再度、時計表示の文字を読みます。夢の中でこの行為を行うと二度目に時計を見たときには、表示されている数字が変わります。数字が変わっていなかった場合はもう一度視線をそらして、時計の数字を読みなおしましょう。

    ラバージ博士がスタンフォード大学医学部で、多くの被験者を使って調査をしたところ、1回の見直しで約75%、2回の見直しで約95%の確率で時計の文字が変わったそうです。

    私の場合、夢の中だと4桁の数字は、時計を見なおす度に毎回変わります。夢の中での意識が、日中と同じくらいバキバキに覚醒しているときでも、夢の中の時計の文字は、目をそらして見るたびに毎回変わります。明晰夢サプリを飲んでいるときは、脳内の神経物質アセチルコリンの影響で、夢の中でも意識の覚醒度が現実と同じくらい高いため、夢の中にいるとは思えないほど世界がくっきりはっきり安定しています。そのため、この方法で夢なのか現実なのか、常に確かめています。

    文字が変わった場合は、その瞬間からその夢が明晰夢に変わります。おめでとうございます。文字が変わらない場合は、それは夢ではなく現実です。

このリアリティテストを自分の習慣にして日常的に何度もやっていると、夢の中でも自動的にやってしまいます。時計をみるという機械的な動作のため非常に強力です。夢の中ではじめて数字が変わった時は、思わず「あっ!」と声がでるくらいびっくりします。実際に経験ください。

リアリティテストは、一日10回を目標にやってみましょう。アラームを鳴らしたり、ケータイの待ちうけ画面にメモを設定したりなど、リアリティテストを思い出すきっかけを仕込んでおくと良いでしょう。忘れずに実行できます。

ラバージ博士が書籍の中でおすすめをしていた方法は「日常で何度か繰り返す動作の前にリアリティテストを行う」というものです。日常で何度も繰り返す動作は、ドアを開ける、階段に登るなど、なんでも構いません。例えば、ドアを開ける前にリアリティテストをすると決めた場合は、ドアを開ける前にかならず腕時計を読むようにしましょう。それを続けていると夢の中でドアを開けるタイミングでリアリティテストが発動し、明晰夢の世界に突入できます。

リアリティテストと観察自我

リアリティテストは、明晰夢を体験する(意識的に夢の世界を体験する)ために使いますが、明晰夢の世界に留まりつづける能力の向上にも役立ちます。

夢の世界に留まり続けるためには「夢を見ていることに気づいている」という観察自我の働きが重要になります。観察自我を使って、夢の世界と、夢の世界に関与している自分の感覚や感情、思考を観察し続けることができると明晰夢は終わりません。この観察自我が弱まると、夢の展開に巻き込まれる通常の夢になってしまいます。

夢の中で何度もリアリティテストをすることで、夢の中で、夢を見ていると確認でき、自覚を高めることができます。

夢のリアリティを上げるため、夢の中では視覚、聴覚だけでなく、身体感覚、嗅覚、味覚も積極的に使ってください。例えば、夢の中で花の匂いを嗅いでみましょう。夢の中での現実感を増すことができます。

アファメーションを使った夢の明晰化

リアリティテストは、明晰夢を見るためには絶大な効果があるのですが、ラバージ博士はリアリティテストにアファメーションという自己催眠を組み込むことで、更に明晰夢を見る確率をあげることができると言っています。

アファメーションとは、脳や心の仕組みを活用した心理学の目標達成メソッドです。自らの決意を心に言い聞かせることで潜在意識に働きかけて、変化や成長を引き寄せるためのテクニックです。通常、人生を自分の望む方向へ変えていくために使う心理学のテクニックですが、明晰夢にも使えます。

リアリティテスト後の追加アファメーション

リアリティテストをした後に、以下の行動を追加して実行します。

  1. 自分の周りの環境に意識を向ける

    リアリティテストをやってみて、時計の表示が変わらなかった場合「今はたぶん夢ではないが、これが夢の中だったとしたら?」と考えます。そして、自分の周りの環境に意識を向けます。周りを観察し、匂い、音、空気の感じに意識を集中します。

    そして「これは本当は夢の中の感覚なんだ!」と、できるだけ思みます。

  2. 明晰夢で何をやってみたいかを考える

    次に、自分が明晰夢を見ることができたら、何をやってみたいかを考えます。例えば「空を飛んでみたい。」などです。

    自分の周りの環境に意識を向けながら、自分が夢の中でやってみたい事を心から楽しんでいる様子を想像してください。自分の周りの環境を夢の中だと思いこみ、そこで楽しそうに空を飛んでいるところを想像します。

  3. 「夢の中で夢であると気づく」と心に誓う

    自分が楽しそうに夢の中で空を飛んでいる想像を継続しながら「次に夢を見た時、それが夢であると気づく。」と固く固く心に誓ってください。自分の内面に深く響かせるつもりで強く決意してください。

以上がリアリティテスト後の追加アファメーションです。これはふざけてやっていては意味がありません。あほくさいと思わずに本気でやってください。本気で「今夢を見ているのか?」と疑ってください。本気で「夢に気づく!夢のなかでこれをする!」と決意してください。行為自体はとてもシンプルですが、潜在意識に働きかけるため強力な効果があり、明晰夢が見やすくなっていきます。

ドリームサインに気づくアファメーション

夢のなかではドリームサインという「夢の中にいることを知らせるシグナル」がいくつも出てきます。ドリームサインとは現実では起こり得ない出来事です。以下のようなものがあります。

  • 数年前に亡くなってしまった友人と話をしている
  • 昔持っていてもう手放したはずのバイクに乗っている
  • 何年も前に引っ越したはずのマンションに帰ってきている
  • 卒業したはずの学校に登校している

眠っているときには、脳内のアセチルコリンの活性が低くなるために認知機能が低下します。そのため、夢の中で不思議なことが起きてもそれを疑うことができません。なんでもかんでも肯定して受け入れてしまうため、現実では絶対にありえないことが起こっても、今夢をみていると気づくことができません。現実では起こり得ないドリームサインが夢の中に出てきても、それを見逃してしまいます。

そこで、ドリームサインが夢の中に出てきた時に「次に同じサインを見つけた時には、自分は夢の中にいると気づく」と起床後、固く決意します。その決意が潜在意識に浸透するまで、心に暗示を蓄積させていきましょう。決意したドリームサインが夢に出てくるたびに、何度も決意を繰り返しましょう。これがアファメーションになります。

アファメーションによってドリームサインが潜在意識に浸透した後に、そのドリームサインが夢に出てきた時には「今自分は夢の中にいる」と気づき、夢が明晰夢に変わります。

夢日記を見返すことでドリームサインを増やすことができます。ドリームサインを自分の中で増やしていくことで「これは夢だ!」と気付きやすくなります。夢日記と併用して訓練ください。