体外離脱という言葉を聞いたことはありますか?日本語では幽体離脱とも呼ばれることがありますが、これは、生きている人間の肉体から霊体や魂が抜け出して外の世界を旅するというような心霊現象ではありません。体から自分の霊体が抜け出して現実の世界を目撃するのではなく、体から抜け出すという身体感覚があった後に、現実と酷似した世界(夢の世界)に行くことです。ですので、体外離脱後の世界で、コップを割っても、机を破壊しても、夢の世界のため現実に影響はありません。また注意深く観察すると現実と違うことに気づきます。
ローリング法を使った体外離脱は「脳の中の意識を司る部分だけを覚醒した状態に保ちながら眠る」ことで明晰夢に入る方法です。
DILD法とWILD法
夢の中で「これは夢の世界だ!」と気付くことができると、そのときに見ている夢は明晰夢に変わります。この「夢の中で夢だ」と気付けるようにするテクニックは、DILD(Dream Induced Lucid Dream)と呼ばれています。このDILD法は、まず眠る必要があるため、眠る前の覚醒状態から一度意識が途切れてしまうという弱点を持っています。
一方の、ローリング法からの体外離脱は「脳の中の意識を司る部分だけを覚醒した状態に保ちながら眠る」ため、眠りに入る前の覚醒状態から意識を途切れさせることなく夢の中に、直接入ることができます。眠りを介さずにそのまま明晰夢に入れるため、眠りが持つ様々な要素の影響を受けずに夢の世界に到達できます。またこの方法で夢の世界に入ると、通常の明晰夢よりも夢がリアルで鮮明です。このテクニックは、WILD(Wake Induced Lucid Dream)とも呼ばれており、最も強力な明晰夢テクニックです。
DILD法とWILD法との大きな違いは、意識の連続性です。WILD法を使った体外離脱は、眠りに入る前の覚醒状態から意識を途切れさせることなく夢の中に入り、夢から目覚めて起きる時まで意識が連続しているため、あらかじめ予定しておいたことを夢の中で実行することが可能です。
ローリング法から体外離脱を経由して明晰夢に至るまでの流れ
さて寝る為にお布団に入りました。ここからどうやって体外離脱を発生させるのでしょうか?ローリング法から体外離脱を経由して明晰夢に至るまでの流れは以下の通りです。
- お布団に横になります
- リラックスして瞑想をします
- 意識を変性意識状態(トランス状態)にもっていきます
- 体外離脱の前兆が起きます
- 金縛りが起きます
- ローリング法で体外離脱し、明晰夢の世界へ
体外離脱の前兆について
眠ることで、脳は覚醒状態から、寝ている状態に切り替わります。体外離脱で夢の中に入るためには、その脳の状態の切り替わりのときに、意識が途切れないよう、なんとか踏みとどまる必要があります。覚醒と眠りの狭間で、脳機能の切り替えがじわじわ起こるため、日中起きているときには感じられない不思議な感覚に遭遇します。代表的なものが、幻聴や幻覚です。
体外離脱は、幻聴や幻覚などの前兆から、金縛りを経由して発生させます。体外離脱の前兆は人により様々です。キーンという音が聞こえたり、夢の映像がちらちら見えたり、肩を掴まれた感覚がしたり、地震かと思うくらい体がぶるぶる震える感じがしたり、体全体が浮いている感じになったりします。
体調によっても変わります。私の場合は、会話のような幻聴が聞こえることもありますし、キーンという耳鳴りが聞こえる事もあります。幻聴経由で体の浮遊感を感じてから金縛りに行くこともありますし、幻聴や幻覚なしで、頭がジンジンしていきなり金縛りになることもありますし、振動が発生しそれを感じていたら急に金縛りになることもあります。
これらは寝る直前に脳が見せていたり、聞かせていたり、感じさせたりするものです。霊の仕業とか、怪奇現象ではありません。幻聴や幻覚は怖いですが、ほぼ毎回発生するため慣れるしかありません。
なぜ幻聴や幻覚が発生するのでしょうか?
人の睡眠サイクルは、まずノンレム睡眠という深い睡眠から始まり、その後、レム睡眠という浅い睡眠になるというサイクルを繰り返します。夢を見るのは浅いレム睡眠のときです。
レム睡眠中には、夢の内容を行動化しないように脳の錐体路と呼ばれる随意運動を支配する神経の主要経路が遮断されており、体に力は入りません。寝てすぐに体が完全に脱力しては困るのでレム睡眠はノンレム睡眠でブロックされています。そのため睡眠は深いノンレム睡眠から始まるのです。夢を見るのは、レム睡眠のときですので、通常は寝入りばなに夢をみることはありません。
日中、突然耐え難い眠気に襲われるナルコレプシー(日本語では過眠症)という睡眠障害があります。そのナルコレプシーの症状のひとつが入眠時幻覚です。ナルコレプシーの方には、入眠時レム睡眠期 (Sleep Onset REM Period: SOREMP)と言われる、入眠直後のレム睡眠の発生があります。睡眠がレム睡眠から始まると、リラックスして眠りに落ちていくときに非常に現実感を伴った夢を見てしまうことになり、それが幻覚をみてしまう原因になっています。
体外離脱前兆で発生する幻聴や幻覚はこれと同じようなものです。体外離脱でも入眠時に夢を見ようとするため、この幻聴、幻覚は避けて通ることはできません。ビビらず慣れましょう。どうしても怖いという方は、金縛り(かなしばり)の恐怖を克服する方法に書かれているエネルギー変換ボックスを使ってみましょう。
ローリング法を使った体外離脱
ローリング法は、体外離脱を研究しているアメリカの機関「モンロー研究所」の創設者であるロバート・モンローさんが開発した体外離脱方法のひとつです。
この方法以外でも、体外離脱から明晰夢に入ることができますが、変性意識から金縛りを経由してローリング法で体外離脱する方法が最もオーソドックスな方法です。まずはこのプロセスを知ることで、体外離脱に対する知識を深めてください。
- お布団に横になります
寝る姿勢は、仰向けでも横向けでもうつ伏せでも構いません。好きな姿勢でどうぞ。一度横になってからは、できるだけ体を動かさないようにします。
- リラックスして瞑想をします
人は寝る前にはリラックスをしています。リラックスして自律神経を副交感神経に切り替えないと寝ることはできません。ここまでは普通に寝る時と同じです。
- 意識を変性意識状態(トランス状態)にもっていきます
変性意識状態という言葉を初めて聞く方もいらっしゃると思います。
変性意識状態とは日中、目覚めている状態とは異なる意識の状態です。催眠術にかかっている人の意識状態や、深い瞑想状態もこの変性意識状態です。意識が覚醒している状態(日中、目覚めている状態)と睡眠状態との間の半覚醒状態のときにもこの状態になります。
眠たくてウトウトしている状態に近いです。電車に乗っているときに、ウトウトすることがあると思います。このとき起きようとせずに、すごく眠い状態を維持してみましょう。すごく眠い状態を維持しながら、気合いで寝落ちしないように粘ってみましょう。意識が消えないように頑張ってみましょう。そうすると頭がぼーっと、してきます。ふわふわしたような、空間にぽっかりと浮いているような不思議な感じになります。これが変性意識状態です。
なお、体外離脱に失敗するケースのひとつとして寝落ちがあります。体外離脱にチャレンジしようとして、変性意識状態になる前、もしくは変性意識状態になってからいつの間にか寝てしまうというものです。
- 体外離脱の前兆が起きます
変性意識状態になると体がふわふわした感じになり、感覚がどんどん薄れていきます。頭はぼーっとしてきて、大変気持ちいいです。二度寝に入る直前の気持ちよさを想像ください。あの気持ちよさがずっと続いている感じです。
体には浮遊感に似た気持ち良さが感じられます。ストレッチをしてすぐ横になったときのような気持ちよさがじーん、じーんという感じで全身に波のように押し寄せてきます。この状態で眠りに落ちずに身体の気持ちよさを感じ続けていると意識がさらに落ちていき、深い変性意識状態になっていきます。
こうなると様々な体外離脱の前兆現象が起こります。主な前兆現象は耳鳴りです。耳の奥でキーンもしくはブーンという音が聞こえます。瞼の裏に映像が映ることもあります。この前兆が数秒間続きます。
前兆現象は体外離脱のチャンスだと思って怖がらず、落ち着いて金縛りを待ちましょう。怖がってしまうと、脳が緊張状態になるため自律神経が交感神経に切り替わり、変性意識状態から一気に冷めてしまいます。
- 金縛りが起きます
金縛りについてもビビらないでください。金縛りという名前が怖いですが、体が締め付けられるような感覚があるためこういう名前で呼ばれています。この言葉は仏教用語からの転用です。不動明王の、敵を身動きできないようにする秘法「金縛り法」が由来となっています。
金縛りはレム睡眠中に起こる睡眠麻痺とよばれる生理的な現象です。レム睡眠中は全身の筋肉が弛緩していて力が入らない状態ですが、このときに脳の意識を司るところだけが目覚めると睡眠麻痺(金縛り)という症状が起こるのです。金縛りとは、眠りに入る前から意識が連続した状態で夢を見ている状態です。
レム睡眠のときは脳が覚醒に近い状態で活動しています。さらに、脳から全身に「動くな」という命令が出されています。夢の中で走りだした時に、実際の体も動くと困ります。そのため寝ている時には体の力が極端に抜けています。体の力が入らないのに、意識がしっかりしているという状態のため、何かに縛り付けられたような感覚で動けないと思ってしまうのです。
変性意識状態からさらに意識を落としていくことで意図的に頭と体の着眠時間に差をつけ、金縛りを発生させます。
- ローリングで体外離脱し、明晰夢の世界へ
仕上げです。金縛り状態のときに、ローリングをすることで体外離脱ができます。体から自分自身がスポっと抜けたような感覚になるため、体外離脱が成功すると明確にわかります。金縛り中に横に寝がえりをうつように「おいしょ!」っと横に体をひねりましょう。手足は動かさず、頭と肩を先に上半身をねじっていくような感じで、体をゆっくり回転させます。
体外離脱は夢の中の出来事なので、実際に魂や意識が体から抜けるわけではありません。体が寝ている状態で動いていないのに、脳が体を動かしたと感じるので、体から魂がスポッと抜けたような体性感覚が発生するのです。たんなる錯覚です。
ローリングをすることで、体から自分自身が抜けた錯覚を伴い、夢の世界に入れます。視界はすぐに確保できませんが、眠気が無くなり頭はスッキリします。
以上が変性意識から金縛りを経由しローリング法によって夢の中に入るという最もオーソドックスな体外離脱の方法です。金縛りが発生すればローリング法で抜けることができるため、金縛りを意図的に発生させるためにこのようなステップを踏んでいます。このやり方ではなくても金縛りになった方はいらっしゃると思います。金縛りが起こったときは夢の世界に入れる大チャンスです。焦らずにローリング法で夢の世界に意識を持ったまま突入してみましょう。