目を閉じて瞑想をして金縛りを待つというスタンダードな体外離脱のルートで夢の世界に入った時は、夢の中で視界が真っ暗です。周囲の状況はなんとなく分かりますが、よく見えません。

目を閉じて瞑想をしているときは、外部から視界に対する刺激がない状態です。その感覚のまま夢の世界に突入するため、夢の中でも目が見えないのです。

視界を確保する方法

ヒトの五感情報の収集は圧倒的に視覚優位です。五感情報のうち視覚が占めている割合は80%にも上ります。そのため視界が暗いと何もできません。まずは視界を確保しましょう。

視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚、いわゆる五感の感覚器官は外部からの刺激情報を収集している、いわばアンテナのようなものです。アンテナで感じた感覚は、脳に伝達され、脳で感じ、脳で認識されます。そして体外離脱後の世界は夢の中であるため、外部から刺激情報は入ってきません。

夢の世界で五感を使い、何かを感じたとき、例えば手でリンゴを掴んだ時は、脳の中に記録されている「リンゴを掴んだ触覚」の記憶を掘り起こすことでリンゴを感じます。夢の中で感覚を取り戻すためには、五感を使用するための象徴的な行為を行い、脳にその行為に関連する感覚の記憶を掘り起こさせる必要があります。

ただし、五感情報は圧倒的に視覚優位のため、何かを手に取ったり、壁を触ったり、ドアを開けたりなど、どんな行為であっても視覚は自動的に確保されます。先程のリンゴの例ですが、通常リンゴを手で掴むときには、目で(視覚で)リンゴを見ながら、手で(触覚で)リンゴを掴みます。リンゴを掴む行為は、このときの記憶が掘り起こされるので、視覚と触覚を取り戻すことに繋がります。

ですので、何か行動をするだけで、自然に視覚が鮮明になってきます。気持ちを落ち着けていろいろ行動してみてください。周りが何も見えなくて行動することが出来ない方は、その場で手をグーパーグーパーしてみましょう。簡単な行為ですが視界を取り戻すのに効果的です。

いろいろ行動してもまだ視覚が薄暗いという場合は、視覚に直接関連する行為を行います。普段眼鏡をかけている方は眼鏡をかけてみてください。暗いから電気をつけるという行為でもOKです。普段やっている「見るための行為」を夢の中で行うことによって、ぱあっと霧が晴れるような感じではっきりくっきりと目が見えるようになってきます。

夢の世界の滞在時間について

次の問題は夢の世界の滞在時間です。体外離脱に成功しても慣れないうちはすぐに目が覚めてしまいます。

特に初めのうちは、夢の世界に入れたことが楽しく、はしゃいで興奮してしまいがちです。しかし意識が興奮してしまうと、睡眠状態である実際の(現実の)肉体も興奮してしまいます。そして実際の肉体が興奮すると眠りから目が覚めてしまいます。眠りから覚めるので夢の世界から現実に戻ってきてしまいます。興奮のスイッチは人それぞれですが、興奮して精神が高揚し過ぎると、眠りから目覚めてしまうのです。

夢の中でも、体外離脱前の意識の持ち方と同じでリラックスが大事です。夢の中で何が起きても動じない心を身に付けましょう。夢の中ではまずは落ち着くこと。常に心掛けてください。

興奮以外にも目が覚めてしまう行為があります。実際の体の事を考えることがそのひとつです。意識が実際の肉体のほうに向いてしまう事で、目が覚めてしまいます。また「明日会議があるなあ」など、現実のことを考える事も避けてください。これも目が覚めてしまう要因になります。

何度か体外離脱に成功すると、目が覚める感覚が分かるようになります。「やばい!夢から覚めてしまう。」というのがわかります。夢の中での自分の感覚があやふやになってくるのです。

夢の世界にとどまり続ける方法

明晰夢の第一人者スティーブン・ラバージ博士が提唱する、夢からの目覚めを防ぐ方法は、後ろ向きにぶっ倒れるという方法と、夢の中で身体をコマのように回転させるという方法です。脳の中で、夢を見るレム睡眠を引き起こすところと、平衡機能をつかさどる場所は同じ場所なので、脳のこの領域を刺激することで再び「レム睡眠」に戻りやすいのだそうです。

私は、もっと手軽な方法で夢の世界の再構築をしています。それは「足踏み」です。左足で片足立ちになり、右足のかかとで地面をガンガン踏みます。ガンガンガンという感じで力強く足踏みすることで、夢の中での五感が復活し、夢の世界が再構築されます。

視界を取り戻す手軽な方法として、手をグッパーグッパーと握ったり開いたり繰り返す方法を紹介しましたが、これは夢の世界の維持にも役立ちます。夢から覚めてしまいそうになったときは試してみましょう。

体外離脱の記録をつけましょう

体外離脱がはじめて成功したときには、しっかりと記録を取りましょう。

体外離脱に成功した時間帯、その日の体調や精神状態、体外離脱の為にどんなことをやったのか、どんな事を考えながら意識を落としていったかなど、なんでもかんでも、できるだけ記録しましょう。そのやり方をなぞる事で、次回以降の成功率が上がります。

変性意識状態の浮遊感覚、体外離脱前兆が発生した時の意識の感覚、金縛りの感覚、体外離脱で体から自分自身が抜けたような感覚はどれも普段の生活では感じることのできない感覚です。自分の言葉で記録することで、この感覚を忘れないようにしましょう。