セロトニン(Serotonin)とは
別名「しあわせホルモン」と呼ばれる神経伝達物質で、感情のコントロール、神経の安定に深く関わっています。セロトニンが不足すると、うつ病や片頭痛、不安感などの原因となります。また、ひとつの考えに集中することが困難になったり、食欲のコントロールがうまくいかずに肥満につながったり、不眠症になったりします。反対にセロトニンの分泌量が増えると、気分の落込みや不安感が減少し、物事に集中できるようになり、リラックスしてよく眠られるようになります。
しかし、セロトニンのレベルがあまりにも高くなると、セロトニン症候群と呼ばれる症状が出ることがあります。精神錯乱、動揺、頭痛、自律神経症状(震え、発汗、発熱、高血圧、頻拍、吐き気、下痢、筋肉のけいれん)や睡眠障害などの症状が出ます。これは抗うつ剤をはじめとした、セロトニンに作用する強い薬を服用中のときや、セロトニンの分泌量を増やす複数のサプリメントやハーブを併用した際にでる副作用で、日常生活が送れなくなる危険性のあるものです。
例えば、コンビニでも購入することができるセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)と呼ばれるハーブのサプリと、その他のセロトニンを増やすサプリを併用したことで、セロトニン症候群の症状が出ることがあります。このように、複数のサプリメントを併用すると危険な副作用が現れる可能性があるので、サプリメントのコンビネーションレシピを試す場合は注意が必要です。
セロトニンと睡眠
セロトニンは、ノンレム睡眠(深い眠り)を引き起こし、レム睡眠(浅い眠り)を抑制します。
脳内のセロトニンの分泌量は睡眠ステージによって変化します。私たちが眠りに落ちると、セロトニンの分泌量が増え始め、ノンレム睡眠の眠りが一番深いステージに至るまで分泌し続けます。その後、徐々に浅い眠りへと移行していくにつれて、セロトニンのレベルも減少し始め、レム睡眠に入るとセロトニンの分泌が止まります。
セロトニンが多く出ていれば眠りが深くなるため、セロトニンを増やす薬は不眠症の治療に使われています。
セロトニンと明晰夢
セロトニンのレベルを高める食品やサプリメントは、鮮明な夢を引き起こします。セロトニンの分泌が増えると、夢を見るレム睡眠が抑制されるのに、なぜ鮮明な夢を引き起こすのでしょうか?
セロトニンはレム睡眠を抑制しますが、セロトニンの効果が切れた後にはレム睡眠反跳(はんちょう)が発生し、レム睡眠の比率が高まるため、そのときに鮮明な夢を見るのです。
セロトニンがキーとなって見る夢は、セロトニンのレベルが低下し始める朝の時間帯に発生します。サプリメントによって、夜の前半部分にセロトニンの分泌量を増やすことでレム睡眠が抑制され、普通より長いノンレム睡眠が発生します。その後、サプリメントの効果が落ち、セロトニンのレベルが下がってくると、脳は本来発生していたはずのレム睡眠を取り戻そうとします。これがレム睡眠反跳です。レム睡眠反跳により、朝の時間帯に長いレム睡眠状態になり、そのときに鮮明な夢を見るのです。
明晰夢を見ることができるのはレム睡眠中なので、セロトニンによるレム睡眠反跳によってレム睡眠の時間が長くなれば長くなるほど、明晰夢を見るチャンスが増えます。
セロトニンのサプリメント
セロトニンを直接口から摂取しても、血液脳関門を通ることはないため、脳内のセロトニンが増えることはありません。しかしセロトニンを合成するアミノ酸のトリプトファンと、5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)は、血液脳関門を通ることができます。脳内のセロトニンレベルを高めるためには、5-HTPのほうがより効果的です。5-HTPのほうが血液脳関門を突破しやすく、またセロトニンの直接的な前駆体となるためです。