現代心理学の父・フロイトの弟子に、カール・グスタフ・ユングという心理学者がいました。フロイトとユングの無意識に対する考え方は同じではありませんでしたが、二人とも意識と無意識が乖離している事が要因となって発生する精神的な問題の解決のために、夢分析を用いました。
フロイトは夢に表れるすべてのものは「性的なもの」と解釈しています。棒状のもの、例えばペンや傘は、全て男性器です。そして箱状のものは全部女性器として解釈していました。ちなみに、ユングは師匠のフロイトがあまりに性器や肛門にこだわることに嫌気がさしたそうです。度重なる意見の衝突による大喧嘩の末、ユングはフロイトに破門されています。
ユングも精神的な問題解決のために夢分析を使いましたが、寝ている時にしか見る事ができない夢分析ではなく、意識が覚醒しているときにも、無意識を知る技法を作り出します。これが今回の主題であるアクティブ・イマジネーションです。
アクティブ・イマジネーションのやり方
アクティブイマジネーションとは、自由な物語を想像することで無意識からメッセージを受け取る作業です。このアクティブイマジネーションを訓練することでイメージ法を使った体外離脱の成功率が大きく向上します。さらに、夢の世界のリアリティが増します。
人間が持っている想像する力、イマジネーション能力を活用し、自由な物語を想像します。様々な方法がありますが、以下のやり方が基本形です。
- イマジネーションの出発点を決める
今から想像する物語をどこから始めるか?最初に物語の出発点の場所を決めます。この場所は自分の訪れたことのない所にします。実際に知っている場所だと、その場所に対する思い出がイマジネーションに影響を与えてしまうためです。
ネットで画像検索をして風景の写真を見つけましょう。写真が決まったら、その風景の場所はどこなのか、いつなのか、を具体的に設定します。設定は自分の好みで構いません。
- 自分自身をその出発点に配置する
自分自身がその風景の中にいることを想像してください。そして、そこで自分は何をしているのかを考えます。「森の中で切り株に座っている」「堤防から釣りをしている」など、風景の写真の中に自分を配置して、そこで何をしているのかを想像します。
- 周囲の環境や状況を観察する
ここからは目を閉じて行います。
想像の中の、自分の周りの状況を観察します。その世界に入り込んだ自分の目線で、周囲に何が見えるでしょうか?
その場所に自分がいる事を想像し、東西南北を見渡します。天候も観察しましょう。地面の感じ、空の感じ、自分が着ている服、履いている靴、所持金、持ち物などを思いつく限り想像してください。
- 観察を続け、何かが起こるのを待つ
風景の中に入り込んだ自分の想像を続けます。
自分の周りで何か変化が起こるまで観察を続けます。周囲の観察を続けているとなんらかの変化が思い浮かびます。
例えば、森の中で切り株に座っていたら「鳥が舞い降りてきた」「正面からお姉さんが歩いてきた」などです。
映像のようにイメージすることが難しい方は、マンガや絵本のような絵を想像しましょう。ページをめくることを想像すると何か変化があるはずです。
- 変化にどう応じるかを考え、行動に移す
(4) で起こった「何か」に対する自分のリアクションを考えてください。まず、どういう行動を取ることができるのか、選択肢をできるだけ多く考えます。
いくつか用意した選択肢の中で一番良いと思った行動をとってください。何となく実行するのではなく「〜という理由があるから、この行動を実行する」といった感じで理由と共に選択肢を選びます。
「森の中で切り株に座って休んでいたら、鳥が舞い降りてきた。舞い降りてきた鳥が怪我していて可哀そうだったから、立ちあがり介抱しようとする。」というように想像してみましょう。
- 相手の次の反応をみる
その行動を受け、相手がどういう反応をするか想像します。
「介抱するために、近づいたら、その鳥が逃げた」などです。
- (5)−(6)を繰り返す
その後は、(5)から(6)までを何度も繰り返すことによって、イマジネーションによる物語を進展させていきます。「鳥が逃げた」ことに対する自分の行動の選択肢をいくつか用意し、一番良いと思った行動を選択し、相手の反応をみます。
(5)から(6)を繰り返す回数(イマジネーションの長さ)に制約はありません。
- イマジネーションの記録をとる
終わったら記録をとります。イマジネーションの物語は放置しておくと忘れてしまいます。文章で記録して、後で読み返すことでイメージ力が強化されます。
無意識からメッセージを受け取ることがうまくなると、物語はどんどん進んでいくようになります。夢が自分の意思に関係なく勝手に進行するのと同じです。
はじめに説明した通り、アクティブイマジネーションは本来、精神分析と心理療法のためのテクニックです。無意識からのメッセージは自分の意思とは無関係に勝手に動くイメージの形でやってきます。この勝手に動く無意識からのメッセージと自分の意識の意見をすり合わせ、心の癒しや成長を狙うことが本来のアクティブイマジネーションの使い方です。自分の内側から自然に湧いてきたイメージと向き合い、そのメッセージをいかに受け止め、いかに答えるか?このやりとりを繰り返すことが意識と無意識のギャップを埋める事になり心の治療になります。
しかし、アクティブイマジネーションは自分の内面を見つめ直す効果だけではなく、想像力の強化に繋がります。そして想像力を鍛える事で、夢の世界の自由度があがり、夢のリアリティが増します。なによりアクティブイマジネーションを続けることでイメージ法での体外離脱の成功率が大きく向上します。
みなさんも、いろんなことを想像したり、妄想したりすることがあると思いますが、ごく短時間でやめていませんか?それをイマジネーションの物語として長く発展させ続ける訓練がこれです。
アクティブイマジネーションは、すぐに結果が出るようなものではありません。継続して取り組みましょう。