瞑想という行為は、科学的な手法に基づいて研究された分野のものではないというイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし近年になって、様々な学術機関で瞑想の効果についての研究が実施されるようになり、瞑想の効果は科学的にも認められはじめています。最近ではGoogle、Apple、 Intel、Nike、HBOのような大手の外資企業が、瞑想を研修プログラムを取り入れるようになってきました。

瞑想で得られる効果の例

  • ストレスの解消
  • 免疫力の向上
  • 集中力の向上
  • 記憶力の向上
  • 脳の活性化
  • 不安や悩みの減少
  • 物事に動じない強い心

瞑想の様々な効果やメリットが明らかになっています。しかし本記事ではこのような効果を狙うのではなく、明晰夢の為に使います。体外離脱の前兆が発生するまで意識を落としていく手段として瞑想を活用します。

瞑想にはたくさんの種類がありますが、明晰夢にはマインドフルネス瞑想が最適です。

マインドフルネス瞑想

マインドフルネス瞑想はインドのサマタ瞑想やヴィパッサナー瞑想が元になっています。うつ病やパニック障害などの再発予防に大変効果があるため、欧米の医療関係者が心理療法として治療に取り入れました。しかし、インドの瞑想は仏教の思想が強く、キリスト教やイスラム教など仏教徒以外の方はこの心理療法を受け入れることが出来ませんでした。そのため宗教的な意味合いをすべて取り除く必要があり、そうしてできたものがマインドフルネス瞑想です。

一般的に瞑想とは「心を無にすること」と認識されていますが、マインドフルネス瞑想をやるために、心を無にする必要はありません。この瞑想はもっともっと簡単です。「今、自分の内面で起こっていること」に注意を向けながら瞑想します。

まず、ひとつのことに心や意識を集中させるために、目を閉じて数字を数えます。そして、数字を数えている間、ひたすら自分の体、感覚、心の観察を続け、それらの変化に意識を向けます。変化に対する気づきを連続させていきます。お釈迦様はこの瞑想中に、心や体が常に変化することを知り、森羅万象は常に変化していると気づき、無常を理解したそうです。

なお、我々は日中は覚醒しているつもりで生活をしていますが、実は文化的に条件づけられた催眠状態の中で暮らしています。例えば私達は何も考えずに会社に通っていますよね。それが癖になっているため、会社に向かっている夢の途中で、その夢が明晰夢に変わっても意識せずにそのまま職場に向かってしまうのです。自分の行動に疑問を持たずに普段と同じ行動習慣を取り続けてしまうのです。このことに気づくことができると、夢の中では職場に行くことをやめて、自由に好きなことをして過ごせるようになります。

マインドフルネス瞑想の核となる部分は「気づくこと」です。マインドフルネスが上達すると、夢の中で夢であると気づきやすくなります。また、夢で「気づく」ことは現実世界で「気づく」ための訓練プログラムとしても利用できます。生活の中でも明晰状態が強くなり、何も考えずにする行動に疑問を持つことができるようになります。自分と周りの環境との関わりを意識できるようになり、行動の決定や選択に自由度が増してきます。

体外離脱にチューニングしたマインドフルネス瞑想

マインドフルネス瞑想にも、いろいろなやり方がありますが、体外離脱用にチューニングした方法をご紹介します。意識を深く深く落とすためにこの瞑想法を実践してみましょう。

  1. 仰向けに寝転んで、目を閉じる
    仰向けに寝転んだ姿勢になって軽く目を閉じます。
  2. 丹田呼吸法で体の力を抜く

    前回の記事丹田複式呼吸を10回ほどやって体の力を抜きます。慣れると、これで軽い変性意識状態に入れます。他の方法と同じように、仰向けになって力を抜いてからはできるだけ体を動かさないようにしてください。

    ここから、マインドフルネスで意識をさらに落としていきます。

  3. ゆっくりと数を数える

    ゆっくりと心の中で数を数えながら、呼吸し身体の変化を感じます。数は100から1つずつ数を引いていきます。

    「ひゃく、きゅうじゅうきゅう、きゅうじゅうはち、きゅうじゅうなな、きゅうじゅうろく、・・・」と心の中で数えながら呼吸をしていきます。呼吸は腹式呼吸です。腹式呼吸をすることで横隔膜を動かし、自律神経を刺激します。副交感神経を優位にして深いリラックス状態になるよう、息を吐く時に数字を数えます。

    これだけです。これを続けていると意識がだんだん落ちてきます。100から0まで数え終われば、かなり深い変性意識状態になります。

ある程度まで深い変性意識状態になると瞬間的に意識が飛ぶようになります。気が付くと数を数える事を忘れていたり、いつのまにか別な事を考えていたりします。気づいた時点で、また数を数えることに戻ってください。

さらに続けると、呼吸をしていることを忘れます。この状態になれば、体外離脱までもう一歩です。数を数えることをやめてください。瞑想は続けます。純粋に自分の心と体の変化を眺めるように、意識を身体に向け続けます。自律訓練法で説明した受動的集中の状態で変性意識状態の気持良さを感じ続けてください。

呼吸が自律神経に切り替わる「自動呼吸モード」

呼吸をしていることを忘れる状態というのが良く分からないと思いますが、ここが重要です。

前回の丹田呼吸法のときにも説明しましたが、私たちの生命活動を維持するために自動的に働く自律神経系の中で、唯一、呼吸だけは、意識からもコントロールができます。

意識がしっかりしているときは、自分で呼吸をコントロールすることができるので、深呼吸したり、わざと早くしたり、息を止めたり、自分の好きなように制御できます。しかし、意識が消失しているとき、たとえば、気絶している時や寝ている時は自律神経の働きによって自動的に息をしている状態になります。

ですので、瞑想である段階まで意識が落ちると、呼吸が意識から外れ、自律神経による自動的な呼吸に切り替わります。数を数えながら意識的に腹式呼吸をしていたはずなのに自分で呼吸ができなくなります。

呼吸が自律神経の制御に切り替わると息苦しく感じることがありますが、ちゃんと呼吸をしています。息ができないと思って、焦ってしまうと変性意識状態が解除されてしまいますので、引き続きありのままを見つめる気持ちを維持して瞑想を続けてください。この呼吸を忘れる状態を、体外離脱の前兆にたどり着く前の目安にしてください。まずはこの自動呼吸モードを目指して訓練しましょう。

受動的集中

体外離脱前兆が起こるような深い変性意識状態は、ここからもう少しだけ意識を落とす必要があります。0まで数えたら、数を数えるのをやめて、受動的集中を続けてください。自分の体の変化を眺めるように、意識を体に向け続け、感覚の観察を続けます。体がふわふわした感じになり、体の感覚がどんどん薄れていきます。頭はぼーっとしてきて、二度寝の寝に入る直前のような気持ちよさに包まれます。さらに受動的集中をしていると、体外離脱前の前兆が発生します。

体外離脱前の前兆が、瞼の裏に映像が見える場合はイメージで抜けてください。金縛りが来た場合はローリングで抜けてください。

雑念について

瞑想をしているときには雑念が気になると思いますが、雑念は気にしなくても構いません。

集中していないから雑念が浮かぶと思い、意識や注意を心に集中しようと一生懸命頑張っても雑念は消えません。雑念は意識して打ち消そうとすればするほど肥大化してしまいます。これは受動的集中ではなく、能動的集中という状態です。この意識の持ち方では瞑想で意識を落としていくことができず、体外離脱から明晰夢にたどり着くことはできません。

最終的に雑念にとらわれない自分になることが、雑念をなくす正しい道です。つまり雑念を「肯定」することが大事です。布団の上で仰向けになって瞑想しているときは、ぼーっとして何も考えてないつもりですが、どうしても雑念が湧いてきます。そこで雑念がでてきても、焦らず「だからどうした」という気持ちでいてください。そしてその雑念をそのまま受け流します。

「雑念がぼんぼん浮かんでるけど心は全く反応しないなー」と、ぼんやり思えるようになったら理想の精神状態になっています。飛び交う考えに意識を向けずに、すべてスルーして心や体の観察を続けてください。

以上がマインドフルネス瞑想のやり方とコツです。何度も練習しましょう。